弘法もEnglishの誤り
雑誌掲載エッセイ
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No.1 「僕にはキミが必要だ!」
これって愛の告白!? それとも…
2002.2.5

Vol.6/2001年春号掲載

私の勤めているソフトウェア会社での話。
そこではアメリカ人だけでなくインド人、韓国人、中国人、フランス人と様々な国籍の人たちが働いています。ここでの共通語はもちろん英語。

ある日、日本人のウェブデザイナーが突然私の部屋に飛び込んで来て叫びました。
「告白されそうです。どうしましょう!!!!」
「誰に?」と尋ねると、なんと社内の営業ディレクターだそう。
「彼?? 彼女いるんだけどなぁ」と怪訝に思ってことの次第を聞いてみると、
"I need you. Do you have time tomorrow?"
と迫ってきたんです、と言うではないですか! これを直訳すると、「私はあなたが必要です。明日時間がありますか?」となります。

彼女は日本からアメリカに来たばかりで、いわば英会話初心者。真っ赤になって「どうしましょう」と言うので、私は吹き出してしまいました。
営業ディレクターはさっき、私に「明日彼女使っていいかな? 会議でHTMLフォームが必要なんだよ」と話していたからです。

"I need you."
と言うのは、愛の告白でもなんでもなく、この場合「仕事に必要だ」と言われているだけなのでした。
"I need you to stay tonight."
これを彼のアパートで言われたなら、もちろんそういう意味。
でも同じ言葉をオフィスで言われたら、「残業しろ」って意味なのです。
だから、私はこの文句を聞く度に「また仕事かぁ」とため息をつくの。(^^;;

その数日後、同じ彼女がもう一度私の部屋に飛び込んで来ました。
「yokoさん、聞いてください。昨日、駅で知らない男から『時間ある?』って聞かれたから、私無視して、睨んでやりました。結構まじめっぽくって素敵な人だったけど、私って、ホイホイついていきそうな軽い女に見えますっ?」と少々怒りぎみ。
「何て誘われたの?」と聞くと、
"Do you have time ?"
と答えた彼女。「え?でも、それって…」
駅で聞かれたのなら、たぶん向こうは
" Do you have the time ?"
と聞いたに違いないのです。

この場合、"the"がつくと、「時間=時計を持っていますか?」となり、つまり「今何時かわかります?」と言う意味になるのです。時間を聞いただけで日本人の女の子に痴漢のように睨まれた、その彼もかわいそうすぎる……。
(勘違いする彼女も彼女だけど)

「また声を掛けてこられたらどうしよう?!」
彼女も嫌がる素振りを見せながら、結構まんざらでもない様子。こんな人に面と向かって「誘われたんじゃなくて時間を聞かれただけだよ」なんて真実を告げる勇気はない私。
性格もいいし、見た目もなかなか可愛いので、きっと彼女が本当にモテる日は近いのだ!
誤解から生まれる恋もあるし、ねっ。

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